オリンピックの弊害

鶴ヶ島駅頭活動

東京オリンピックの中止を求める世論が高まっている昨今の社会状況は、浮かれすぎた感覚が蔓延っていた近年の様子を思い浮かべると、とても感慨深い。

私の住む川越市は、東京都ではないけれど、ゴルフ競技が行われることが決まり、だいぶ影響を受けた。

私が属する日本共産党は現在5人の議員団だが、人口35万人、市域109平方kmと大きな自治体であることもあり、日常的な活動地域を分けて活動している。

私が受け持つ市内北西部、入間川以西の地域には、ゴルフ競技が行われる霞ヶ関カンツリー倶楽部があるため、議会の特別委員会などにも所属するなどして関わってきた。

身近な地域でオリンピックというのは自尊心をとても刺激し、浮かれやすいことではあるけれど、実際に進んでいった行政の動きにはとても不満を感じている。

もともと、近年の商業的なオリンピックの様子やナショナリズムを煽る報道、社会的な雰囲気も含めて、私は好きではないし、反対の立場を党の姿勢も含めて取ってきた。

オリンピック開催が決定して以降、党はその姿勢を少し変えたわけだけれども、私自身は不満を抱え続けていた。

オリンピックに対する感情は取りあえず脇に置くとしても、無視できない市政上の事実を一つ提示しておきたい。

霞ヶ関カンツリー倶楽部は、市の中心部から最も離れた狭山市との境に位置している。
交通アクセスは悪く、最寄りの鉄道駅は笠幡駅というJR東日本の小さな駅だ。

ちなみに、川越市には鉄道が3路線(東武東上線、西武新宿線、JR川越線)が乗り入れていて、鉄道駅は、川越駅(東武、JR)、川越市駅、鶴ケ島駅、霞ヶ関駅、新河岸駅(以上東武)、本川越駅、南大塚駅(以上西武)、南古谷駅、的場駅、笠幡駅、西川越駅(以上JR)の11駅がある。

最も乗降客が多い川越駅は、1日あたりの乗降客が東武で12万4000人、JRは乗車のみの公表で3万8000人、次いで西武本川越駅が5万3000人、東武川越市駅が4万7000人と続く。

霞ヶ関カンツリー倶楽部の最寄り駅、笠幡駅はJRで乗車のみの公表だが3000人を少し下回る。
少し離れるが、同じエリアに東武の鶴ケ島駅3万3000人と霞ヶ関駅2万9000人がある。
鶴ケ島駅には路線バスが乗り入れているが、霞ヶ関駅には路線バスは入っていない。

さて、川越市は近年、駅周辺整備にたくさんのお金をかけている。
特に、反対口の無かった霞ヶ関駅、新河岸駅、本川越駅と反対口の開設を含めた周辺整備が進められた。

反対口開設とは別に、バリアフリーの対策や使いづらさの解消などのために他の駅でも整備が計画され、その中に鶴ケ島駅があったのだ。
しかし、オリンピックの開催が決定し、その後に霞ヶ関カンツリー倶楽部でのゴルフ競技の計画が進むにつれ、鶴ケ島駅の整備計画は何の前触れやお知らせもなく施策メニューから消え失せた。

変わって進められたのは件の笠幡駅整備である。利用の規模は桁が違う。公表されていない降車人数を考えても5倍は違うだろう。

鶴ケ島駅は高校通学のためのバスも入っているし、タクシーを利用する方も多く、古い設計でバス、タクシーに乗車する際の段差の大きさや、傷んだ駅前広場デッキが長く放置されるなど住民要求も高い。しかし、これらは現在のところ完全無視の状態。

進んでいた鶴ケ島駅の整備計画は消え、いつのまにか今度は開発志向の高い南古谷駅周辺整備へと市政の関心が移りつつある昨今である。

私は毎週水曜日に、朝の駅頭宣伝を鶴ケ島駅西口で行っているのだけど、住民の様子に日頃から接している身としてはなんとも言えない気分である。

もちろん議会でも色々な形で繰り返し指摘はしてきたけれども、行政の反応はなんとも鈍い。
心情的にオリンピックを好まない私でさえオリンピックに抗するのはエネルギーがいるし、同調圧力や国の政治にモノを言いづらい行政の現場ではなおさらだろう。

オリンピックが本当に開催されるかは予断を許さないけれど、開催されたか否かに関わらず、きちんと総括することは行政にとっても私たちにとっても必要だろう。