ワクチン予約の顛末、親切心と罪

新型コロナのワクチン接種が進められているが、目下、予約が取れなくて大混乱している。

多くの高齢者が不安を感じている。
何とかしてほしいとの声もたくさん受ける。
何とかしてあげたい気持ちは山々だけど、今日は「何とかします」とは言えないことをご勘弁いただきたい。

私の住む川越市も混乱については例外ではない。

5月6日に75歳以上の予約をはじめたら、電話もネットもパンクし、大部分はアクセス不能、幸運にも繋がったところから予約が行われ、半日ほどで受け入れられる上限に達し打ち切られた。

これを受け、当初5月10日に予定していた65歳から74歳までのクーポン券の発送を急遽取りやめ1ヶ月程度の先送りを決め、お詫びのハガキを対象者に送った。

月に2回発行されていた広報が月1回発行に減ってしまっていることも市からのお知らせが届けられる条件を狭めている残念すぎる事情もある。

次に起きた残念なことは、国や県が集団接種を行うとして市町村の事情お構いなしに進めはじめたこと。市町村が発行するクーポン券が無いと接種できないという。

おいおい、混乱してるから74歳までのクーポン券止めておいたのに、これじゃ苦情の再生産がはじまる。なら、先に言ってよという話。わざわざゴメンナサイハガキまで送ったのに、国や県の集団接種のためにクーポン券を送れとの苦情が増えて、この方針も途中で転換。1ヶ月待たずに、2週間程度の遅れでクーポン券を送った。ゴメンナサイハガキが無駄だったと批判するつもりはない。ここには市の責任が重いとは思わない。

5月6日の経験を経て、若干の回線増などは行われたものの、抜本的に問題を解決する手段は存在しないため、混乱が起きることは分かりつつ5月21日に2回目の受け付けを行うが、当然ながら前回とそれほど変わらない混乱のもと、1日で受け付け終了。

実態を冷静に見てみよう。

川越市は高齢者への接種は、地域の医療機関での接種を先行させる方針をとっていた。高齢者なので生活エリアに近いこと、かかりつけ医などで受けられるメリットが大きいことなどが理由で、極めて妥当な判断だった。私たちも議会内外でこの方針は妥当だと評価もした。
また、集団接種についても、その後に準備を進め、見通しがたったら発表する方向だった。これらも比較的早い段階で示されている。

問題は、医療機関も集団接種も準備が整う時期と1日あるいは1週間あたりの接種可能な人数、ペースである。

川越市では現段階で医療従事者への接種が終わっておらず、保管用の冷凍設備を入れた大きめの病院(つまり、1日にある程度の接種をさばける規模の病院)はまだ高齢者への接種に入れない。だから、市全体が受け付けられる予約はあまり多くない。

5月6日時点で可能な受け付け人数は6200人だった。

この時点で川越市が可能な接種のペースは2週間ほどで6200人というペースということ。

一方で、75歳以上の接種対象者は5万人を超えている。心配する家族を含め、それをはるかに上回る人たちが一日中電話やスマホ、インターネットに繰り返しアクセスを続けた。
どんなに幸運だったとしても、予約が取れるのは極めて一部。やる前から結果は分かっている。

問題の2つ目は、ワクチンが国や県から届く具体的な配送スケジュールと量が不明確だということ。

確定している配送量とスケジュール、医療機関の体制が整った数、この両方が確定した分が予約可能な上限となる。

第2回目の予約受け付けは5月21日に行われた。体制が少しずつ整ってくるので、受け付け人数はだいぶ増えたが、対象者数との乖離は依然として大きいので、混乱状況は前回と表面的にはあまり変わらない。ここまでは、住民のみなさんには申し訳ないが、想定どおりだろう。

混乱を解消するためには二通りの方法しかない。

1つは受け付け可能人数を対象者数近くまで増やすこと。これは、いまの時点では不可能で、医療機関の体制と搬入されるワクチンの量、搬入スケジュールが確定することの条件がすべて揃う必要がある。つまりそれまで待つ以外に無い。逆に言えば、政府の発表を信用するなら、しばらく待っていれば、それほど遅くないうちに(1ヶ月か2ヶ月ほどだろう)整うわけだ。

2つ目は、予約できる対象者を絞ること。例えば、最初は90歳以上だけ受ける、次の週は85歳以上などと小分けに受け付け可能にする方法。実際に、そうした対応をしている自治体もある。

しかし、川越市のように大きな自治体はこの選択は難しい。高齢者は全体として基礎疾患を抱えていたり、情報アクセスが苦手だったりする。加えて、政府が接種を煽るものだから、誰もが自分こそ先に接種が必要と思っている。ただでさえ75歳で区切る対応をしているから、これ以上の区別は「不公平」という苦情を量産することにしか、残念ながらならない。

次善の策として、65歳から74歳までにクーポン券を送る際に、3回目以降の受け付けを、70歳〜74歳と65歳〜69歳までと分ける対応にした。
6月11日の受け付けは70歳以上、
6月18日の受け付けは65歳以上と順次枠を広げていく。

6月からは医療従事者への接種を終えた医療機関が高齢者への接種に入るから、かなり改善するだろうが、混乱の度合いはまだなんとも言えない。

あちこちの市町村で、自治体職員や地域の自治会などが親切心でお手伝いしたことが報じられた。
恥ずかしながら、私たち共産党の仲間たちの間でも献身的なお手伝いが美談のように伝えられた。

けれども、率直に言ってこれは間違いだ。

何度も言うが、どんなに頑張っても、これまでの状況は運に恵まれるのはごく一部。なんなら、知り合いから5人も頼まれればあっという間に「ごめんなさい無理でした」と言うしかなくなる。

私が日頃受け持つ活動地域では、1000部を超える紙の後援会ニュースを、月一回から二月に一回くらいのペースで発行し、後援会のみなさんの努力で配り、読んでいただいている。読者の大半は高齢者だ。かなりの方がスマホやインターネットも苦手、家族の手も借りられないで不安に思っている。

こんな時に、一部の人から予約してと頼まれても「はい」とは言えない。数名は成功するかも知れないけれど、後の方は確実に期待に答えられないことが分かっているからだ。

事実、5月6日以降、私の電話はまるでコールセンターだ。(少し大げさかもしれないが)最初の数日間で10数件、いまでも日に数件の電話が鳴ることもある。

電話口では、現在の実情を話し、少しの間冷静に待つ方が賢明だと話している。

地域の方から話を聞いても、多くの高齢者は情報が届かず不安に思っている。誰かの手助けを得られない人は、自分だけが取り残されていると感じている。身内などの援助で幸運にも予約が取れた方を羨ましく思い、取れずに不公平感を募らせた方は、親切心からリスクを承知でまだ確定していない先までの予約を受けてくれるかかりつけ医を「ズルい」と告発するような密告めいたことも耳にする。

いま必要なのは、こうした人たちに現状をきちんとお伝えし、冷静に待とうと声を掛けることだろう。情報が少ない人たちは、ビラや街頭宣伝での情報も喜んでくれる。その先は口コミも頼りになる。

偉そうなことを言って、できるのはこの程度かと、不満に思う方も多いと思うが、当面はこれが最善の方法だと確信している。
時間が経てばインターネットが使えなくてもコールセンターで丁寧な対応を受けられる。それでも不安だったり、高齢でできない方も生まれる。そんな状況が見通せる段階になれば、不便さを手伝ってあげることは悪くないだろう。
少し気が利いた対応をするなら、「もう少し待って落ち着いて来たらお手伝いできますよ」とは言えそうだ。

他の市町村で親切が可能なところはあるかもしれないが、我が市ではいまは無理。できないことに、できる素振りで振る舞うことの罪は大きい。

遅ればせながら大事な情報。

川越市は今月末から集団接種をはじめる。先週末に試験的にかすみ野地域で自治会などを中心とした接種が行われたが、それとは別で市が主体となり公共施設で行われる。

接種会場は
農業ふれあいセンター
高階市民センター
名細市民センター
北部地域ふれあいセンター
の4ヶ所。

開始は農業ふれあいセンターが5月29日から、それ以外は6月5日から。土日に行われる。

予約は当面の分は21日の受け付けで終了しているようだ。いまできることは、今後の予約受け付けの時に、医療機関だけでなく集団接種でも可能であることを知っておくこと。

さて、ワクチンの確保が遅れたり、自治体の事情を無視して接種を煽る発言や報道を進めたのは間違いなく菅政権、自公政権、政府である。冷静に、地域が可能なペースで進めれば、多少の混乱は避けられないにせよ、これ程ひどい有様は生まなかったことは間違いない。

時間が経てば問題が解決することは私たちにも分かっている。菅政権はそれを承知で、混乱をしようが誰が困ろうが、ワクチン接種を7月末までに終わらせると言えば、それに近い状況が生まれ、自分たちの成果だと吹聴できると信じている。

こんな無責任な人たちに、いつまでも権力を握らせておいてはいけないと、肝に銘じて今年の総選挙にのぞもう。