発熱とPCR検査

新型コロナの感染報告が目に見えて減っている。川越市保健所では4月30日を最後に陽性確認は報告されていない。

しかしながら、減っているのは陽性者だけではない。検査数そのものも大幅に減っている。

元々の検査数が少ないうえ、さらに減っていくと、どのように感染が広がっているか掴みにくくなる。さらに、減っている検査数をどう増やしていくかも難しい課題になりそうだ。必要と分かっていてもなかなか広がらないのは、一般的な健康診断などを見てもよく分かる問題だ。

検査数が減っている原因を分析しておくことも必要だろう。風邪やインフルエンザなどの流行期が過ぎ、発熱などで病院に行ったり相談を寄せたりする方が減っていることは想像できる。

加えて、新型コロナと判定された場合、当事者がバッシングの対象になったり、疫学調査として詳しく行動を聞き取られたり、所属する会社などにまで広く影響することになるため、自ら進んで検査を受けるのは相当ハードルが高くなっているのではないか。

市中感染が起きているならば、誰であっても感染をする可能性はあり、どんなに対策してもゼロにすることは困難だ。感染者をバッシングするような社会的な風潮を戒めていく世論づくりが必要だ。

川越市保健所の様子を見てみると、検査をはじめた当初からおよそ2ヶ月の間で検査数は多くても30件に満たない程度と逼迫した状況は伺えなかった。検査に至る過程は、保健所に相談のうえ接触者帰国者外来を通す国の方針が基本だったため入口で絞られていたことは事実。しかし、医療機関からの相談には比較的誠実に対応されていたように見えた。

こうした状況ではあるが、検体を採取する部分の「PCR検体センター」設置に向けて医師会と準備を進めたり、核酸抽出装置といった作業を効率化する設備、薬品等の確保で検査能力の向上を進めている。

いまは少し収まっているが、今後の第2波に備えた準備は進みつつある。この規模でどれくらいの拡大に耐えられるかは未知数ではあるが。

県内を見ると医療機関の院内が深刻で、元々感染症を専門としていないところでは、一般の患者と新型コロナの疑いがある人の窓口を分けるのに苦労があったと思う。結果として、救急患者も含めて発熱を訴える患者を断るところもあったようだ。

夏場の熱中症や、秋冬に風邪などの患者が増えた際にどう対処していくことになるだろうか。発熱などの症状がある方を、感染症対策が行われた発熱外来やPCR検査でまず受け付けるようにすれば不安は減るが、普通の風邪などの患者をすべて見られるだけの発熱外来が準備できるとも思えない。

感染拡大が一段落している今こそ、冷静に今後に向けて知恵を働かせるときだ。新型コロナの感染拡大を防ぎながら一般の患者をきちんと診られる方法について、医療機関の取り組みも注視しておきたい。