緊急事態宣言のもとで働く現場 その2

緊急事態宣言下で働いている人の状況考察 第2回目です。
第1回目はこちら

休業している事業者の状況はどうなっているでしょうか。

休業が要請されているのは、学校、劇場、宿泊施設、運動施設、遊技場、展示施設、遊興施設などです。

施設を閉じると、多くは事業収入が無くなることになります。従業員にも休ませる対応が多くなるでしょうが、施設の維持などのために勤務している人も少なからずいると考えられます。

収入が絶たれますから、従業員の雇用を維持するには休業補償が必要です。
また、施設を維持するための経費のうち、家賃や設備のリース料、融資の返済などは施設を閉じていても発生するものですから、これに対処出来なければ経営は厳しくなるでしょう。休業が長引けば耐えきれなくなる事業者が必ず出てきます。
家賃などの固定費への補助や、融資などの返済を猶予する施策が必要です。

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ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社が4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを⾏った。負債は合計約37億円となる模様だ。破産に伴い、直営5施設は営業を終了する。

同じくホテル運営会社のWBFホテル&リゾーツも27日、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。負債総額は約160億円と、コロナ関連では最大の倒産となった。
5/4 東洋経済ONLINE 「コロナ倒産」本格化、追い込まれたホテル業界より引用)
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働いている人の側から見てみます。

施設を閉鎖した後、体力のある事業者は直ちに働く人を切り捨てず、雇用を維持しようとするでしょう。別の仕事を割り当てたり、テレワークの導入などで働き続ける対応です。
この場合、働く人は仕事の内容は変わるかもしれませんが、受け取る賃金は当面の間は影響ありません。(とはいえ、経営が悪化するためボーナスなどが減る可能性はありますが)

働かせることが困難な場合は仕事を休ませる事になります。このとき、さらにいくつかの選択肢が生まれます。

休業手当

労働基準法(昭和22年法律第49号)等に基づき、使用者の責に帰すべき事由により休業した場合に労働者に支払われる手当。

労働者災害補償保険(労災保険)の休業補償給付(業務災害)・休業給付(通勤災害)とは異なる。

使用者が手当を支払って休ませる対応です。
今回の新型コロナでの休業では、国からの補助も行われていて従来より事業者の負担は軽減されますが、適用条件があること、補助があっても事業者の負担はゼロにはならない問題があります。
また、休業手当には最低基準が設けられていますが、元の賃金の6割と低い基準であること、基準の日額を計算するときには歴日が使われ、休日には支払わなくて良いとされているため、実際に受け取れる休業手当はさらに低くなること、国の補助に日額8130円の上限があるといった問題があります。

この方法だと元の賃金に比べて、休業期間の収入が減るため、当面は有給休暇を使ってしのいでいる労働者も多いのではないかと思います。
国の緊急事態宣言の対応が見通しにくいことから、使用者の側から有給休暇を取るように求めているケースもあるようです。
公務員の現場でも、職務専念義務免除(職専免)ではなく、有給休暇で対応している職場が増えているのが気になるところです。

有給休暇は本来、働く人が自らの意思で自由にとれるものですから、この対応は問題を含むのはよく分かると思います。また、有給休暇を取得できる日数は限られていますから、休業要請が長引けばすぐに続けられなくなります。
とりあえず、いまは何とか食い扶持を繋ぐための対応でしょう。

休業手当に話を戻しますが、国の補助を抜本的に手直しする必要があります。

(そもそも、事業者への補助を通して労働者の休業補償をする制度の枠組みがあまり良いものとは言えないと私自身は考えますが、その議論はとりあえず脇に置いておくことにします。)

第1に、対象となる事業者を抜本的に増やすこと。厳しい要件を設けずに、休業要請に基づいて休んだ場合すべてに適用すべきです。

第2に、元の賃金の水準を補償すること。少なくとも、生活を維持できる手当か補償されなければ休むことができません。

第3に、日額8330円の上限を見直すこと。休業手当は休日は支給しなくて良いことになっているため、日額8330円で週5日働く例では、平均月22日の勤務として月額183,260円ですが、この水準で生活するのは相当困難でることが分かるでしょう。

まずは急いでこの検討をして欲しいと考えます。

(次回に続く)